
自分で自分の逃げ道をなくしてしまう ウソの連鎖
何がウソで何が本当か―。ウソをついているのに本当のことを言っていると勘違いしている人をたまに見かけます。自分でもウソをついていることが理解できていないのです。
本人に悪意は全くありません。ウソをつくこと以外は、とてもいい人の場合もあります。幼少期の経験がそうさせているのか、またはさみしがり屋でかまって欲しいだけなのか。いずれにしても、息をするように、ごく自然にウソをつくのです。
理想の自分を演じるために ウソをつく人
他人に対して、自分が有利になるようなウソをついて関係を深める…。そうすると、もうあとには引けず、ウソをずっとつき続けていくしかありません。本当の自分を出すことができないから、自分が理想としている像に近づける(なりきる)ためにウソをつき、ウソの自分を演じるのです。

スタートは 知名度20ぐらいから
ひとつ例を挙げましょう。誰でも知っている芸能人Aさん。このAさんを知名度100とします。
彼は「昔、ある芸能人(知名度20ぐらい)と遊んでたことがあるんだ」と言います。いきなり知名度100の人とつきあったと言っても信用してくれないだろうから、最初は知名度20ぐらいの人とつきあったことがあると軽いウソ(本人は軽いつもり)をつきます。
そのコメントに対し、友だちから「えー、すごい!」「やるなー」など、少しだけ評価を得ます。なんだか、自分が偉くなったかのような錯覚に落ちます。
そして、その時に得た快感が忘れられず、次に「あるプロスポーツ選手(知名度50ぐらい)と飲みに行ったことがあるよ」と次はもう少し高い知名度50ぐらいの人を言います。すると、更に周りからは賞賛されます。
一生続けなければならない ウソの連鎖
そのようなことを続けていくうち、「実はウソなんだ」とは言えない段階までウソをつき続け、ついには周りの人からの評価もメチャクチャ上がっていて、あとには引けなくなっているのです。そうなると、もう一生ウソをつき続けなくてはいけなくなります。
そして、知名度の低い人とつきあったと言ってもだんだん刺激が得られなくなり、ついに知名度100のAさんとつきあったことがある、と大きなウソをついてしまいます。
しかし、実は周りの評価は「メチャクチャ上がる」わけではありません。最初のころは疑いなく信じていた周りの人たちも、知名度100の人とつきあった、という話にはさすがにだまされません。ウソをついた本人が気づかないだけです。3つぐらいウソをついた時点で「あの人、ウソついてるんじゃない?」と、周りは既に疑いを持っているのです。
階段をのぼっていくように ウソを積み重ねる人
そして、大学時代の友人にウソをつき続けていると、同じ快感を得たいがために会社の同僚など、違う人間関係にも同じようにウソをつくようになります。
ウソをつくと、誰でも罪悪感が芽生えます。そのウソを重ね続けると罪悪感がどんどん積み重なり、押しつぶされそうになります。普通ならいつかはその重さから耐えられなくなり「ごめんなさい、実は…」とウソの重責から逃れようと懺悔の気持ちが芽生え、謝罪しようとするのが多くの人の行動です。

開き直ってしまう人は重症
ところが、たまに「もうたくさんウソついたから、3つも100も一緒だ」と開き直ってしまう人もいます。こういうタイプは、他人から指摘されただけでは修正できるものではありません。
また、人間は弱いものです。逃げたくなって当然です。だから悪いことをしたと思ったら謝罪をするのですが、たまに逃げない人がいます。謝罪なんて自分の評価を下げるだけだし、いまさらそんなことはできない、と事実から目を背け、ウソをつき続ける人生を選んでしまうのです。
ただ、このような方たちを一方的に責めたてても解決には至りません。生き方を修正する方法は、自覚と反省しかないのです。他人からの容易な指摘は、逆効果になり得ます。
ウソとフクロウ
フクロウという鳥がいます。フクロウは眼球を動かせません。その代わりに首を270度回転させられるので視野が広く、いち早く危険を察知できるのだそうです。
以前、首を180度回転し、真後ろを向くフクロウをフクロウカフェで見たことがあります。首より下の体が正面なのか後ろなのかわかりにくい体系のフクロウだったので、前か後ろか、どっちを向いているのかわかりませんでした。
「息をするようにウソをつく人」って、もしかしたら自分でも、前を向いているのか後ろを向いているのか、首を回転させているのかいないのか、ウソをついているのか本当のことを言っているのか、自分でもわからなくなっているのかもしれません。


無駄な時間
このような方から「あなたは私のことをどう思っているのか?」「あなたは優しいのか優しくないのか?」などを知るには、とても困難です。自分でも理解できていなくて、理想の自分を本当の自分と偽っていても、他人からはわからないからです。
ただ、時間をかければボロが出ます。しかし、目の前の相手が「ウソつきなのか正直なのか」を判定するのに時間がかかれば、それはもう無駄すぎる時間です。恋愛にはある程度時間がかかる場合はありますが、これはよくない時間の使い方です。
真偽を知るためのテスト
「この人、もしかしたら…」と少しでも疑問を持つような出来事があれば、早めにスッキリするために思い切って疑いを晴らすよう問いかけてみましょう。聞きにくいでしょうが、一生に関わるとても大切なことです。
確かめる方法としては、一度彼が言ったこととつじつまが合わない話が出た時に軽くスルーせず、キッチリと「あれ? 前はこう言ってなかった? 私の勘違いかな…」と、相手を責めるような問いにならないよう、さりげなく真実を確かめることです。これなら相手に悪い印象を与えることはありません。
そのあなたの問いに対し、スラスラっと彼が納得できる返答ができれば合格です。ただし、確認のための会話は、日を変えて時間をおき、最低でも4~5回は試したほうがいいでしょう。あくまでも「あなたの思い違い」というスタンスで確認するのが、相手のプライドを傷つけないコツです。
SNSでの書き込みを コソッと確認してみよう
この「息をするようにウソをつく」行動は、自身の承認欲求が原因になっている場合もあります。このようなタイプは、SNSの中では実際よりもさらにエスカレートしている場合が多く、心まで許した彼女に対しても本垢を教えない、あるいはSNSをしていることすら教えない場合もあります。
注意:SNSのことを内緒にするのは 必ずしもウソとは直結しない
ただし、誰しも隠し事や内緒にしたい事はあるので、SNS活動を教えたくない人はいます。ストレスの発散に使ったり、他人に言いたくない趣味があるかもしれません。
いずれにしても、「?」と思っても本人がイヤそうにしていたら、あまり突っ込まないことです。彼女、親、兄弟、親友…、誰にも言いたくない秘密があっても、誰も責められません。
秘密とウソは違う
秘密にすることとウソとは、似ているけど違うものです。秘密はソッとしておくのが大人のマナーです。
でも、ウソはダメです。特に常習的なウソは、自分にとっても相手にとっても、身を亡ぼす危険な行為です。相手のウソに対し、どうしてもガマンできなくなれば、追求するのではなく、少し距離をおくのが正しい人間関係の進め方だと思います。
そういえば、「年齢をごまかす」人がたまにいるようですが、どこかでバレてしまいます。軽い気持ちでサバを読んだら、あとでツラい目に遭うかもしれません。あなたからすれば小さなウソのつもりでも、相手にとってはどうでしょう? 内容は小さくても、ウソをつかれた…とわかったときのショックは相当なものです。
一生つき続けられる自信があるならウソでもいいでしょうが、ウソを隠し通すのは重い十字架を背負ったまま生きていかなきゃならない行為。できるだけ控えたほうがいいと思います。