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【恋愛事例②】ホストには全く興味なかったのに…

男性との会話が苦手だった 内気な朱音さん

きっかけは 友だちの誘いから

 今回の事例は、朱音(あかね)さん(女性・20代)を襲った悲劇です。

 朱音さんは大卒後、証券会社へ事務職として就職しました。

 朱音さんは他人の考えを深く尊重する、とてもていねいでまじめな方でした。大学時代は資格取得のため遊ぶ時間も削り、猛勉強の毎日。そのため男友達はひとりもいませんでした。

 趣味は映画鑑賞と絵本好きの、清楚で、かなりおとなしめな性格です。男性に対しては目を合わせるのも恥ずかしがるほど、内気な女性です。

友達からの「一緒に入会しよう!」のひとことが 大事件のはじまり

 朱音さんは入社3年目のある日、同僚の幸美(ゆきみ)さん(女性・20代)に誘われてマッチングアプリに登録することになりました。

 「友達を紹介すると無料で試せるポイントがお互いに入るから、一緒に入会しよう!」と幸美さんから気軽に誘われました。

 普段からマッチングアプリにあまり興味がなかった朱音さんも「せっかく誘ってくれたんだから登録だけなら…」と、幸美さんの誘いを受け、登録することにしました。幸美さんはその際、「1か月縛りのポイント目的だから、試してみておもしろくなければ、一か月以内にいつでも自分で勝手に退会してくれていいからね。そしたらお金かかんないから」と朱音さんに言いました。

 幸美さんはお試し開始後も正会員になり、約3か月で13人と実際に会えたそうですが、なかなか趣味や性格が合わない人ばかりだったらしく、結局はそのアプリを半年ほどで退会しました(幸美さんは他のアプリにも登録しています)。

 一方の朱音さん。もともと男性に対して苦手意識を持っていた朱音さんでしたが、マッチングアプリという、気軽に男性とやりとりができる環境をとても気に入ったらしく、お試し登録の1か月だけで、6人の男性とやりとりをしたそうです。

 最初はものすごく緊張しながらネガティブな気持ちで試してみたものの、自分でも意外にハマってしまったことが、少し嬉しくさえ思ったといいます。全然知らない人ばかりなのに、やりとりがすごく楽しめたらしく、顔を合わせない、直接話さなくてもいい自分では苦手としていた交流方法ではなく、アプリの特徴に自分の性格が合ったのでしょう。

 その中で、とても性格の合ういい人との出会いに恵まれ、最初、友達としておつきあいをすることになったそうです。

 ただ、朱音さんはその出会いがきっかけで、ある大きなトラブルに巻き込まれてしまいました。

はじめは夕方までのショートデートだったけど その日は違った

 朱音さんはアプリで知り合った彼に対し、アプリ上でのチャットの中で、「真摯で素直。とても正直な方」――。そんな印象を受けたそうです。そのころの朱音さんは、彼から接客業の仕事をしているとだけ聞かされていました。

 実際に会ってみると、礼儀正しく清潔感があり、服の着こなしも上手でとてもかっこよく、話題性も豊富。加えて優しい。初対面からとてもいい印象だったと言います。

 ある日、彼から日曜日のお昼過ぎごろに「今晩、もし予定が空いていたら食事に行きませんか?」とお誘いを受けたそうです。朱音さんは特に予定も入ってなかったので、「ありがとうございます。ぜひお願いします」と返事をしました。

 これが彼との5回目のデートでした。初対面から二か月を経過していました。

 ただ、いままでのデートは全て日中。ランチやティータイムなどのデートで夕方には帰宅するデートでした。だから今回も、朱音さんは「夜とはいっても食事だけだろうし、2時間ぐらいかな」と思っていたそうです。

 待ち合わせ場所に15分前に着くと、彼は既に待っていました。いつもラフな服を着ているのに今日はスーツでした。ヘアスタイルもビシッとセットされた彼を見て、朱音さんは、普段のイメージとの違いにギャップ萌えしたそうです。

 細身でスーツの似合う彼は、とてもオシャレな高級フレンチ店を予約してくれていたそうです。

 出てきたのは見たことのない食材ばかりのコース料理で、朱音さんは夢心地。全て撮影したくなる映えディナー。どれもおいしくて高そうなものばかり。

 食後にコーヒーを飲んだ後、会計は彼がカードで支払ってくれました。そして、お店から出る前に彼が「もう少し話したいから、もう一件だけつきあってくれないかな? 時間大丈夫?」と聞いてこられました。まだ時間も早かったし、「話したい」と言われたから嬉しくて、もう一件おつきあいすることにしました。

びっくり! でも楽しかった…。

 「友だちが働いているお店なんだ」と連れてこられたのは、入口がド派手なお店でした。ホストクラブだと、ひとめでわかりました。

 ちょっと…いや、かなりびっくりしましたが、店の前にはスーツでビシッと決めた若い男性が並び、大きな声で「いらっしゃいませ!」と私たち2人を満面の笑顔で出迎えるのを見て、「私、お酒弱いから、ちょっとこういうのは苦手だな…」と言いたかったのですが、彼には結局言い出せず。彼にアテンドされるまま、店内に入りました。

 店内はとても豪華で、すれ違うホストみんながていねいに挨拶をしてくれました。男性相手には緊張してしまう朱音さんにとって、決して居心地のいい空間ではありませんでした。しかし彼から席に促され、二人で話しているうちに、彼の知り合いのホストも同席し、他の接客担当の方も増えていき…。そうしているうちに、いつのまにか気づかぬうちに、朱音さんにとって、とても楽しい空間になりました。

 ただ、見たことのない、とても高そうなボトルを何本か前に並べられるのを見て、少し不安になってきた朱音さん。ふと時計を見ると、いつのまにか終電近くの時間。もうそろそろ帰りたいと彼に告げると、「本当だ、もうこんな時間。ごめんね、遅くなって。駅まで送るよ」と言ってくれたので、甘えることにしました。会計は彼が全部、出してくれました。

 朱音さんはこの日、慣れないお酒を割とたくさん飲んだせいで、お店にいた時間の後半は、あまり覚えてなかったそうです。ただ、「とても楽しかったなー」「夢のような世界だったー」という記憶はあったそうです。

 自分の性格をよくわかっている朱音さんは、ホストクラブに行ったこと、多くの男性に囲まれて話をしたこと、お酒をたくさん飲んだこと…回顧してみると、いままでの引っ込み思案な自分からは考えられない行動をできたことが、すごく嬉しかったそうです。

 朱音さんがホストクラブに抱いていたイメージは、チャラそうな男性ばかりがいて、お金を派手に使って楽しむ世界で、お客さんもまたお金持ちのマダムで…というものでした。

 しかし実際に行ってみると、若いおとなしめの女性客も多く、ホストもお客様に対してすごく礼儀正しくてグイグイ迫ることもなく、みんな話も上手でとても楽しい空間でした。いままでホストクラブに対して持っていたイメージとは、全く違いました。

 ただ、たぶん高いお店だっただろうし、まして自分の性格では、ひとりでは絶対いけないお店だというのはわかりました。次の日、いい経験をさせてもらった彼にお礼の連絡をしました。

さらにびっくり!

 それからまた数日後。次に彼と会ったのは、昼間のランチデートでした。

 「こないだの夜は楽しかった?」と彼に聞かれ、「うん。すごく楽しかった! ホストクラブって初めて行ったけど、想像してたのとずいぶん違ってた」と答えた朱音さん。

 「本当? よかったー。ちょっと無理矢理に連れて行った感じになったかも?…と心配してたんだ」と彼はホッとした様子でした。

 そのあと彼は言いました。

「俺…実はあのホストクラブで働いているんだよ。ごめんね、黙ってて」

 …さすがに動揺しました。

 黙ってたことにもガッカリしましたが、まさかホストだったとは――。確かに楽しかったのは事実。でも、彼がホストをしてたなんて、想像もしたことがなかったのです。

 そして次に脳裏に浮かんだのは、「他の女性にも、優しくしてるんだ…」ということ。いままで「自分だけに優しくしてくれている」と思っていた彼が、接客とはいえ、ホストとして同じように他の女の子にも接していたと思うと、なんだかモヤモヤしてきて…。嫉妬かな…。

 モヤモヤした気持ちを引きずるのはよくないと思い、とっさに「私はお金持ってないし、通ったりできないけど、いいの?」と聞きました。すると彼は「いやいや、僕の仕事を知ってほしかっただけだし、そんなこと全然考えてないよ。朱音ちゃんとの関係は別のことだよ」と言われ、少しホッとしました。

 でもやっぱり、ハッキリ聞いておきたいと思いました。「ホストクラブで働いていると、普段、女の子とのつきあいも多いの?」と、ちょっと遠回しに、漠然と聞いてみました。

 「いやいや、俺って全然女の子に人気ないんだよ。だからいつも、あの店で一緒にやってる友だちのホストとか、他の先輩ホストのヘルプばっかりしてるよ。ヘルプって、横について水割り作ったりしてるだけで、ふたりきりで話とかしないしね。だから売り上げも少ないし、いつも先輩やオーナーに怒られているんだ。残念ホスト(笑)。

 それと、お客さんとは外であまりふたりきりになっちゃいけないんだ、うちの店は。だからこうやってふたりきりでデートしてるのも、もちろん朱音ちゃんだけだからね。この仕事、ノルマがあって結構つらいけど、朱音ちゃんと会ってる時が一番幸せだし、なんだか乗り切れてるんだ」

 じゃ、なぜ転職しないの?…と聞きたかったのですが、これ以上言うと、彼を責めてるみたいで聞きにくくなってしまった、と朱音さんは言います。

 その日はそこで別れ、私は帰途につきました。

同情してしまい 彼が喜ぶサプライズを

 帰宅してから、今日の彼とのやりとりを思い返しているうちに、「彼はプライドが高いから、仕事もきっと一生懸命がんばりすぎているはず」「いつもおいしいもの食べさせてくれるし、お金もいっぱい使ってくれてる」と思いました。

 だから恩返しのつもりで、ちょっとでも助けてあげたら喜んでくれるかな…。夜に一人で家にいると、そんな計画が浮かんでしまった。寂しかったのかもしれないてす、と自身の心情を回顧していた朱音さんでした。

 そして朱音さんは彼のお店についてネットで料金表などを調べ、予算も用意しました。

 ある日、会社で有給休暇をとり、ちょっと派手めな服を着て、少しだけメイクも派手にした夜。準備万端で彼が出勤する日を調べ、サプライズでお店に行きました。

やっぱり彼は優しいな…

 お店の近くまで来ると少し緊張してきましたが、勇気を出してお店に。すぐにお店の中からスタッフが出迎え、「いらっしゃいませ。本日ご指名のスタッフは誰かおられますか?」と聞かれたので、彼の源氏名を伝えると、席に案内されました。

 数分後、とても驚いた顔で彼がやってきました。

 「朱音ちゃん! メチャクチャ、サプライズだよ! びっくりした! なんで? 電話くれればよかったのに。メチャクチャ嬉しいよ!」と、本当に驚きながらも喜んでくれていました。作戦成功です。私も嬉しかったです。

 そして彼は「でもあまり無理してお金使わないでよね。嬉しいけど、女の子って服とか化粧品とかお金かかるからさ。でも、気持ちが嬉しいよ。ありがと」と言ってくれました。やっぱり彼は優しいな…と、朱音さんは勇気を出して、お店に来てみてよかった、と思いました。

次第にペースを増やし 彼のお店に通うようになってしまい…

 彼と話している途中、彼の友だちが来てくれました。「いいなー。サプライズだって? 彼女、優しいねー」と彼の友だち。そしてオーナーも来てくれて「彼のためにありがとうございます。彼は最近がんばってるんですよ。朱音さんのおかげかな?(笑)今日は楽しんでいってください。おひとりで初来店くださり、ありがとうございます。記念に私からささやかですが、プレゼントを」と、シャンパンをいただきました。

 時間制のお店なのについ長居してしまい、指名料とブランデーの安いボトルキープもして、この日の出費は結局20,000円ほど。なんだか、夢のような夜でした。お店でも優しくしてくれる彼をますます好きになっていました。

 次の日、彼からスマホに「昨日はありがとう! ますます朱音ちゃんにハマって行ってるよ。ヤバい(笑)」とメッセージが。

 それから朱音さんは、月に2回、月に3回、毎週1回、週に2回…と段々とペースを増やし、彼のお店に通うようになりました。

 ところが朱音さんは普通のOL。もちろんお金が続くはずもありません。いざという時の貯金を崩し、キャッシングしたり、持っていたバッグを買い取りに出したり…。また、お店に行くときの服も買わなければいけないので、利息の高い貸金業者からも借りたり…。

 そんな彼女の行動をどこからかウワサで知った、ある昔からの親友が「返せるアテはあるの?」「いくらぐらい借りてるの?」と心配しましたが、朱音さんは何も答えませんでした。

 むしろ、そのホストの話題になると朱音さんは、

「彼の悪口を言う人は、許せない」

「私に嫉妬してるの?」

「彼は、そんな人じゃない」

「彼は、私がいないとダメになってしまう」

「彼には、私が絶対必要なんだ」

「私だけしか、彼は助けられない」

 …など、人が変わったように、そのホストを信じきり、かばうような話をしたそうです。朱音さんがホストと仲良くなるなんて、昔の朱音さんからは考えられません。

借金、退職、精神的なダメージ、その後…

 その後、彼女は高額な借金を抱えてしまったことを親にも会社にも知られ、親が弁護士に相談。借金は親が一時的に立て替えました。精神的なダメージを負った彼女は会社を退職し、友だちとも連絡を絶ってしまいました。

 ホストの彼とのいろんなやりとりの中、彼女には何度か「あれ?」「なぜ?」という疑問が浮かんだことがあったと言います。そのときに勇気を出して、自分が納得できるような答えをもらえるようにしたほうがよかったのかもしれません。

 恋愛に関わらず、自分のできる範囲で、何事にも無理せず生きていくことが大切なのでしょう。いろんな場面で出てくる「依存症」という言葉。朱音さんもその犠牲者となったのかもしれません。

(名前のみ全て仮名です)